フィリピンの「社会問題」を学ぶ

フィリピンの抱える問題① – HIV感染の急増

フィリピンの社会問題①「HIV感染の急増」

このシリーズでは、フィリピンの社会問題それに取り組むNGOについて見ていきたいと思います。

第1回目の今回は、フィリピンにおける「HIV新規感染の急増」という社会問題にフォーカスしていきたいと思います。

UNAIDS(国連合同エイズ計画)のデータを元に、フィリピンにおけるHIVの現状を見ていきましょう。

世界的にはHIVの新規感染は減少傾向にある。

まずはフィリピンのHIVの状況を見る前に、世界全体のHIV新規感染の状況を見てみましょう。

世界全体のHIV新規感染数の推移は、直近30年で以下のようになっています。

【世界全体でのHIV新規感染数の推移】

Trend of new HIV infections出典:UNAIDS「Trend of new HIV infections

このグラフを見ると、世界的にはHIVの新規感染数は1997年を境に減少傾向に転じていることが分かります。

しかしフィリピンではHIVの新規感染が急増している。

しかし、世界全体が減少傾向にあるのに反し、フィリピンはかなりの増加傾向にあります。下のグラフを見てみてください。

【フィリピンにおけるHIV新規感染数の推移】

New HIV Infection in Philippines出典:UNAIDS「Country factsheets | Philippines 2018

減少に転ずるどころか、むしろ常に増加しており、しかも直近の10年間で爆発的に急増していることが分かります。

フィリピンでは、1984年1月から2018年5月までの約34年間で、HIV陽性と診断された人は6万7395人います。そのうちの75%以上が直近5年間の新規感染なんです。

フィリピンにおけるHIV新規感染の詳細。

一体、フィリピンのどの層で新規感染が増えているのか?フィリピンにおけるHIV新規感染の急増の詳細を見るために、年齢別のデータを見てみましょう。以下の表をご覧ください。

【フィリピンのHIV新規感染の年齢別データ】

引用:UNAIDS「UNAIDS data2019

これを見ると、

  • 0-14歳:ほぼ変化なし
  • 15歳以上の女性:微増
  • 15歳以上の男性:急増

となっていることが分かります。15歳以上の男性の新規感染数が4100から12000の約3倍にも増えていることが分かります。

なぜフィリピンで新規感染が急増しているのか?

世界規模で見るとHIVの新規感染は全勝傾向にあるのに、フィリピンではなぜ急増しているのか。その原因は主に以下の2つが挙げられます。

  • カトリックが大多数であること
  • Grindr、Tinderなどのデートアプリの普及

【要因1: カトリックが大多数であること】

アジアにはキリスト教の国が2つありますが、フィリピンはそのうちの1つです(もう1か国は東ティモール)。フィリピンでキリスト教を信仰する人の割合は88.8%

キリスト教と一言で言っても、キリスト教には多くの教派(カトリック・プロテスタントなど)があり、フィリピンでは教派としてはカトリックの信仰者が圧倒的に多いです。上記の88.8%のうち、カトリックは80.6%です。

そしてこのカトリックの理念として、「かけがえのない生命を尊重する」というものがあります。人工中絶や人工授精を否定するだけでなく、避妊することに対しても反対姿勢を取っています

このため、避妊具を使用すること自体が否定的に見られており、これがHIVの新規感染の一因になっています。

【要因2: Grindr、Tinderなどのデートアプリの普及】

とはいえ、カトリック信仰は昔からであり、このことだけでは昨今の急増を説明しきれません。

急増の要因、それはGrindrやTinderといったデートアプリの普及ではないかと言われています。

このことは、2019年10月3日のThe Wall Street Journalの記事「HIV Cases Sour in the Philippines, as Dating Apps Spread」でも指摘されています。記事の一部を見てみましょう、

But health advocates think a major driver has been dating apps, which have encouraged promiscuity in a country where traditional social norms have kept people from using contraception and learning about responsible sexual practice.

引用:「The Wall Street Journal

つまり、「カトリック信仰による避妊具使用への否定的見方」と「デートアプリの普及」の掛け算によって、フィリピンでHIVの新規感染数急増が起こっているのではないかと考えられています。

この問題に取り組んでいるNGO一覧

「日比NGOネットワーク(JPN)」のデータベースで該当するNGOを検索したところ、フィリピンにおけるHIVに対して取り組んでいるNGOはありませんでした。

もし、該当するNGOをご存じの方がいらっしゃいましたら、ご連絡いただけると嬉しいです。掲載させていただきます。

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